黄斑円孔とは
網膜の中心にある「黄斑」に孔(穴)ができる病気です。
最初は直径約0.1mmの小さな孔ですが、徐々に大きくなり、最大で約1mmに達します。黄斑は私たちの「見る」機能で最も重要な部分であるため、孔ができると物が歪んで見えたり、視力が低下したりする症状が現れます。
多くの場合、50歳以上の加齢による硝子体の変化(特発性)が原因で発症しますが、他の眼疾患や外傷が原因となることもあります(続発性)。特に強度近視の方は発症しやすく、一度発症すると網膜剥離を伴い重症化するリスクも高いため注意が必要です。
治療には網膜硝子体手術が必要で、他に有効な治療法はありません。手術によってほとんどの症例で孔は閉鎖され、視力の維持や改善が期待できます。ただし、発症から時間が経過すると治療効果が得にくくなるため、早期の受診と治療が重要です。
手術の際は、最後に医療用ガスを眼内に注入し、通常は術後3日間、食事やトイレ以外の時間はうつ伏せ(つらい時は横向きや座った状態での下向き姿勢)で過ごしていただきます。当院では、自宅でのうつ伏せ姿勢をサポートするクッションの貸し出し(無料)を行なっております。また手術日程は仕事などのご都合にできる限り配慮して調整いたしますので、安心してご相談ください。
黄斑円孔の見え方・症状
黄斑円孔では、主に以下の症状が現れます。
放置すると視力の低下が進み、矯正しても0.1以下になることがあります。
- 物が歪んで見える
- 視力の低下
- 視野の中心が暗く感じる
- 光がまぶしく感じる
- 色の見え方に異常が生じる
黄斑円孔の原因
黄斑円孔は、特に明確な原因がない「特発性」と、他の病気に伴って発症する「続発性」に分類されます。
特発性の場合
黄斑円孔の多くを占めます。
加齢により硝子体が収縮し、網膜から硝子体が剥がれる「後部硝子体剥離」が起こることで、引っ張られた黄斑に孔が生じます。
主に50代以上の女性に多くみられます。
黄斑円孔はどうやって治すの?
網膜硝子体手術
黄斑円孔の主な治療法は網膜硝子体手術です。
この手術では、硝子体を切除し、黄斑円孔の原因となった薄い硝子体膜を剥がした後、内境界膜の処理を行い、医療用ガスを注入して孔を閉じます。
手術時間はおよそ20〜40分程度です。
当院では日帰りでの網膜硝子体手術を実施しており、術後数日間はうつ伏せ(つらい時は横向きや座った状態での下向き姿勢)での安静が必要となります。当院では、自宅でのうつ伏せ姿勢をサポートするクッションの貸し出し(無料)を行なっております。また生活上の注意点や具体的な過ごし方については丁寧にご説明いたします。お仕事などのご都合も考慮して手術日を決めますので、どうぞ安心してご相談ください。
手術後の生活と注意点
うつ伏せ・うつむきの姿勢を保ちましょう
手術後の1~3日間は、食事やトイレの時間以外は24時間、うつ伏せ(つらい時は横向きや座った状態での下向き)の姿勢で過ごす必要があります。これは、注入した医療用ガスの圧力により黄斑円孔を確実に塞ぐための大切な制約です。予後に大きく関わるため、必ず守ってください。
視力回復には個人差があります
手術後、視力が回復するまでの期間は個人差があり、1週間から数か月程度かかります。視力が完全に安定するまでには、約6か月を要することが多いです。早期治療ほど回復の可能性が高まるため、早めの発見・治療が重要です。
手術に伴う主な合併症
眼内炎
傷口から細菌が入り込むことで眼内炎を発症すると、重度の視力障害や失明に繋がることがあります。急激な視力低下や眼の痛みを感じた場合は、すぐに当院へご連絡ください。
駆逐性出血
手術中の血圧上昇や眼に力を入れることが原因で突然の出血が起こると、重大な視力低下を引き起こすことがあります。手術中はできる限りリラックスしていただけるように配慮し、血圧などのバイタルを定期的に測定し、必要に応じて点滴による薬剤投与をする場合があります。
網膜裂孔・網膜剥離
手術中または術後に網膜の弱い部分に穴や裂け目ができることがあります。手術中に発生した場合はすぐに処置を行いますが、術後に起きた場合は早急な再手術が必要です。
白内障の進行
網膜硝子体手術のみを行った場合、術後数か月から数年で白内障が進行することがあります。特に50歳以上の方は、術後にほぼ確実に白内障が進行するため、通常は白内障手術を同時に行うことが一般的です。
黄斑円孔を放置するとどうなる?
黄斑円孔は、ごく初期の段階であれば自然に治ることもあります。しかし、ある程度進行すると自然治癒は期待できません。孔は時間とともに徐々に大きくなり、放置すると著しい視力低下を引き起こします。特に強度近視に合併した黄斑円孔では、網膜剥離へ進行することがあり、最悪の場合は失明に至ることもあります。
黄斑円孔の予防
黄斑円孔に対しては、特に確立された予防法はありません。
ただし、高性能のOCT検査により、硝子体と網膜の接着状態を詳しく観察できるため、注意が必要な所見や進行の有無を定期的な通院によって確認することが大切です。