診療時間

診療時間 日・祝

9:00~12:30

14:00~17:45

◎…火曜日・金曜日午後は手術
▲…9:00~16:30(昼休みなし、不定期にて2診体制)
受付時間:診療終了30分前まで 休診:木曜、日曜・祝日
※火曜午後は非常勤による外来診療あり、その他不定期にて各専門外来あり

TOPへ

加齢黄斑変性

加齢黄斑変性とは

黄斑は網膜の中心に位置し、物を見る際に最も重要な役割を果たす部位です。加齢黄斑変性は、この黄斑の機能が加齢とともに低下する病気で、視野の中央が歪んだり暗く見えたりする症状が現れます。欧米では中途失明の主な原因とされていますが、日本ではまだ認知度が低い状況でした。しかし、高齢化の進展に伴い、日本でも近年増加傾向にあります。

加齢黄斑変性には「滲出型」と「萎縮型」の2種類があります。滲出型は脈絡膜に新生血管ができることで発症し、これらの血管は非常に脆く出血しやすいため、視力低下を引き起こします。一方、萎縮型は網膜の細胞機能が徐々に低下して網膜が萎縮していくもので、進行は比較的ゆっくりですが、現在有効な治療法はありません。

この病気は主に60歳以上の男性に多くみられ、喫煙歴や肥満、高脂肪食の摂取、高血圧などが危険因子とされています。日本でも発症率が増加しており、「目の生活習慣病」として注目されています。

加齢黄斑変性の初期症状

加齢黄斑変性によって黄斑部が障害されると、視力が低下したり、ものの見え方に異常が生じたりします。具体的には、視野の中心がぼやけたり歪んで見えたり、暗く感じたりします。
多くの場合、症状は片目ずつ現れるため、自覚しにくく気づくのが遅れることがあります。
気になる方は、新聞などを片目ずつ見比べて、見えにくい部分や歪みがないか確認してみると良いでしょう。

加齢黄斑変性の原因

原因は、加齢に伴う変化や光によるダメージ、喫煙や食生活、遺伝的要因などによって、網膜の中心部にある黄斑が障害されることです。特に喫煙は症状の進行を促進することが明らかになっています。

加齢黄斑変性の種類

萎縮性加齢黄斑変性症

萎縮性加齢黄斑変性症は、加齢黄斑変性の中で最も一般的なタイプで、黄斑部の細胞が徐々に死滅していくことで視力が低下します。これは、網膜の下に異常な色素沈着(ドリュース)が現れたり、視細胞の萎縮が進んだりすることが原因です。

視界の中心がぼやけたりゆがんだりして、直視が難しくなることがあります。進行は緩やかですが、症状が悪化すると滲出性加齢黄斑変性症へ移行する可能性もあります。

滲出性加齢黄斑変性症

滲出性加齢黄斑変性症は、黄斑部の下に新生血管が発生し、これらの血管から液体や血液が漏れ出すことで視力が急激に低下するタイプです。漏れた液体が黄斑部を傷つけるため、視力障害が起こります。

萎縮性に比べて症状の進行が速く、視界に黒い斑点や歪みが現れることが多いです。中心視力の急な喪失も起こりやすいため、早期の診断と治療が非常に重要です。

加齢黄斑変性になりやすい人

  • 60歳以上の方
  • 齢黄斑変性症の家族歴がある方
  • 特定の遺伝子(例:CFH、ARMS2など)を持つ方
  • 女性
  • 喫煙されている方
  • 長時間紫外線を浴びる方
  • 肥満またはBMIが高い方
  • 高血圧や高コレステロールの方
  • 抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、亜鉛など)の不足がある方
  • 網膜に異常(ドルーゼン)がある方

加齢黄斑変性の検査

眼底検査

目の奥に光を当てて網膜の状態を確認する検査です。
この検査で網膜の血管の様子や出血、滲出の有無を把握できます。

眼底検査

視力検査

加齢黄斑変性症では視力低下が起こることがあります。視力検査では、遠くや近くの物がどの程度はっきり見えるかを調べ、黄斑の異常による視力の変化を早期に検出します。

視力検査

光干渉断層計(OCT)

網膜の層構造を断面で詳しく観察できる検査で、滲出や新生血管の状況を確認することが可能です。

OCTアンギオグラフィー(光干渉断層血管撮影)

造影剤を用いることで、より詳細な血管の画像を撮影できます。ただし、造影剤使用時にはまれに吐き気や嘔吐、アレルギー反応、血圧低下などの副作用が起こる可能性があります。

加齢黄斑変性の治療

従来は、薬物療法やレーザー治療、手術などで新生血管の退縮を図り視力回復を目指していました。

しかし近年では、抗VEGF薬(アイリーア、ラニビズマブBSなど)を硝子体内に直接注射する方法が普及し、良好な治療成果が得られるようになっています。

抗VEGF療法(抗血管新生薬療法)

加齢黄斑変性症の滲出型では、脈絡膜から新生血管(異常血管)が発生し、進行が速く急激な視力低下を招きます。これらの新生血管は脆弱で、出血や浮腫を引き起こすことで視細胞機能が障害されます。抗VEGF薬は、血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑え、新生血管の成長を抑制します。硝子体内に注射することで、新生血管の増殖を効果的に抑えることが可能です。

抗VEGF療法(抗血管新生薬療法)

レーザー治療(網膜光凝固術)

レーザー光を新生血管に照射して成長を止めますが、照射部分の網膜も凝固されるため、そこは視力が失われます。黄斑の中心部に新生血管がある場合や大量の出血がある際は適応外の可能性があるため、網膜硝子体手術を検討することがあります。

レーザー治療(網膜光凝固術)

光線力学療法

光感受性物質のビスダインを腕の静脈から投与し、弱いレーザーを照射して新生血管を閉塞させる治療です。ビスダインは新生血管に集まり、レーザー照射により活性酸素を発生させて新生血管を閉じ、出血を防ぎます。この治療が必要な場合は、提携医療機関にご紹介いたします。

加齢黄斑変性は自力で治る?

黄斑変性症は自己治療が難しいため注意が必要な病気です。放置すると視力低下や失明につながる恐れがあります。以前は治療が困難とされていましたが、医療技術の進歩により、初期段階での早期発見と治療が可能になりました。

加齢黄斑変性症は現在の医療では完治が難しい病気ですが、特に滲出型に対しては、症状の進行を抑えたり視力の一部を回復させたりする治療法があります。

一方、萎縮型は進行が緩やかで治療法は限られています。ビタミンCやビタミンE、亜鉛などのサプリメントや抗酸化物質の摂取により進行を遅らせる可能性はありますが、視力回復や完治は期待できません。

滲出型には抗VEGF薬(血管内皮増殖因子阻害剤)の注射治療が一般的で、異常血管の増殖を抑え視力の安定や一部回復が見込めますが、根本的な治療ではありません。

加齢黄斑変性症の進行を抑えるには早期発見が鍵となるため、定期的な眼科検診を受け、異変を感じたら速やかに受診してください。

治療の継続と生活習慣の改善により視力の維持や生活の質向上が期待できますが、現時点で完治を目指す治療法はないことを理解しておくことが大切です。